小児科・アレルギー科・小児皮膚科

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     院長のブログ

スマホゲーム依存症2018年12月31日

インターネット・スマホゲーム依存症の診療で有名な久里浜医療センター院長の樋口進先生が書かれた「スマホゲーム依存症」(内外出版社 2018)を読みました。

 普段の発達外来で感じているインターネット・スマホゲームの問題の背景が、とても分かりやすく書かれています。

2017年には日本のスマホの世帯保有率が75.1%になり、私たちにとって手放せないツールとなりました。電車に乗っていても、スマホゲームを楽しんでいる人をごく普通に見かけます。スマホゲームユーザーは3480万人で、スマホの持つ15-69歳の半数以上がスマホゲームで遊んだことがある計算になります。

 スマホゲームはファミコンなどの以前の家庭用ゲーム機とは大きな違いがあります。オフラインだった家庭用ゲーム機に対して、スマホゲームはインターネットでつながり、ゲームを通じて顔の見えないユーザーとコミュニケーションがとれます。そのため、現実社会でうまく適応できていないと感じる人にとって、承認欲求や自己肯定感を満たしてくれる有難い機能になっています。また、スマホゲームは、スキマ時間にいつでもどこでもやることができます。

 実は、スマホゲームをやる人のうち98%は課金をしていません。残りの2%の人が課金をし、そのうちの9%、全体のユーザーのわずか0.19%の人が収益の48%を支える構造になっています。

 ゲーム会社はゲームを継続してやってもらうために様々な工夫をしています。まず頻繁にアップデートし、飽きさせないようにします。また、プッシュ通知といってゲームに関する最新情報をスマホに配信します。さらに、従来のゲームと違い「クリア」という概念がなく、終りがありません。最後に「ガチャ」というシステムがあります。一定の課金をするとランダムにアイテムを得ることができるのですが、これが射幸心をあおるのです。

 ゲーム依存症は、世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」として病名に認定されました。ゲームのやりすぎで、人間関係や健康状態がくずれたらゲーム依存症を疑うべきです。日本では専門の外来を設置しているところがまだ少ないのが現状です。

 スマホゲーム依存症になりやすい危険因子としては、①男性、②友人が少ない、③衝動性が高い、などが挙げられます。そのため、自閉症スペクトラムやADHDの人たちは、依存症になりやすいと言えます。

 スマホゲーム依存症が長期になると脳の前頭前野が破壊され、衝動のコントロールができなくなります。また、報酬欠乏症(一定の刺激では満足できず、強い刺激を求める状態)になります。

 対策については、まだまだ手探りのようですが、久里浜医療センターでは様々な取り組みをされています。患者本人だけの力では依存から抜け出すことは難しく、家族の協力が必要です。

 著者の『スマホゲームは現代社会における「悪魔との契約」と言っても過言ではありません』という言葉に、全く異論がありません。

学校の「当たり前」をめた。 2018年12月24日

千代田区立麹町中学校長の工藤先生が書かれた本(時事通信社 2018)です。私が日頃から思っていることが、たくさん書かれていて痛快でした。

 何と言っても一番素晴らしいのは「宿題の全廃」です。

 宿題をなくすことには当然反対も多かったようですが、工藤先生はこのように説明しています。『批判や誤解を恐れずに言えば、教員が宿題を出すのは子どもたちの「関心・意欲・態度」を図り、評価(通知表)の資料とするためではないですか。もっと専門性を発揮しないといけない』と。

 そのうえで、次のように書かれています。

『学校で宿題を出されて子どもが勉強机に向かっていれば、勉強の習慣がつくと、保護者は安心するに違いありません。その思いはわかります。しかし、本当に大切なのは、勉強時間よりも勉強の中身です。自律的に学ぶ経験を積まないと、決して工夫して仕事ができる人にはなりません。もっと言えば、私は、学校でしっかりと勉強をして、家では好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、スポーツをしたり、あるいは、ぼんやりと思索する時間の方がよほど有意義だと思っています。』

 さらに定期考査(中間・期末テスト)も全廃しています。ここでも、とてもいいことが書かれています。

『一夜漬けでの学習は、「テストの点を取る」という目的においては有効ですが、学習成果を持続的に維持するうえでは効果的と言えません。テストが終わったら、かなりの部分は忘れてしまうからです。そうしたプロセスを経て獲得した点数・評価は、その生徒にとっての「瞬間最大風速」に過ぎず、それをもって成績を付けたり、学力がついていると判断することは、適切な評価とは言えません。』

 しかし、テストそのものをなくしていません。効率的に学力を高められるように単元テスト(小テスト)を行い、実力テストの回数は増やしています。また、通知表は絶対評価なので、学力が十分にあれば全員に「5」をつけてもいいと主張されています。

 私自身の経験と二人の息子を育てた経験から個人的には、宿題と定期テストの全廃に賛成です。 嫌々やる勉強は非効率的で、本当の学力はつきません。また、宿題や定期テストが子どもを勉強嫌いにさせて、本当に勉強が必要な大人になってから困ることになるでしょう。

 この本では、ただ単に「当たり前をやめる」だけでなく、様々な学校での取り組みを紹介しています。これらの取り組みを独断ではなく、子どもたちにとって何が大切かを一つ一つ議論しながら改革を進める工藤先生に見習うことはたくさんあります。

 多くの中学校でも、麹町中学のやり方を取り入れてほしいと願っています。

 

最後に、今年はレアチーズの白いクリスマスケーキです。

AI(人工知能)とBI(ベーシックインカム)  2018年12月16日

AIBIに関する本を2冊読みました。

AIBIはいかに人間を変えるのか」(波頭亮 幻冬舎 2018)と「AI時代の新・ベーシックインカム論」(井上智洋 光文社新書 2018)です。

 いずれの本でもAIが進歩することによって社会の大きな変化が起こり、BIが必要になるという趣旨で、共感できることが非常に多くありました。

AIには大きく分けて、特化型AIと汎用型AIがあります。特化型AIは特定の仕事のみを担うのに対し、汎用型AIは人間ができることはすべてできるものです。AIが進化を続けると、10年から20年で特化型AIが多くの分野で人間の能力を上回り、30-50年後には汎用型AIも開発されると予測されています。

 アメリカではすでに税理士や会計士の仕事がAIに代替されつつあり、有名な証券会社のゴールドマン・サックスの運用担当者が600人から2人に縮小されています。医療の分野でもレントゲン写真の読影で医師を上回る能力を発揮するという報告もあります。

 今後知的分野を中心に徐々に人間の仕事を特化型AIが担うようになることは十分予想されますが、30-50年後に汎用型AIが開発されるとクリエイティブ系、マネジメント系、ホスピタリティ系以外の仕事はAIがすべて担うことになります。純粋に人間でなければやれないとされる仕事は、仕事全体の1-2割と言われています。そうすると残りの8-9割の人は生産活動に関与しない状態になります。

 このように多くの人の仕事がなくなる、あるいは仕事をする必要がなくなった時に何が起こるのか? ディストピアにもユートピアにもなる可能性があります。

AIの進歩でAIを保有する少数の資本家は大金持ちになる一方で、多くの人が仕事を失い収入も少なくなります。しかし、このような世界は富裕層にとってもいい世界ではありません。貧富の格差が限りなく大きくなり、社会が不安定になり犯罪が増えるでしょう。また、消費の中心になる中間層がいなくなるため経済は失速してしまいます。このような世界がディストピアです。

 一方ユートピアになるシナリオでは、ベーシックインカム(BI)が重要な役割を果たします。BIは、国民一人一人に生活ができる最低限を上回る金額を与える制度です。つまり、働かなくても一定の金額がもらえ「働かざるもの食うべからず」から「働かなくても食って良し」になる世界です。生活のために仕事に追われることはなく、やりたいことだけをやることのできる理想的な世界(ユートピア)が実現するのです。

 生活保護がBIの役割を果たすという考えに対しては、両著者とも否定的です。理由として、生活保護の受給を恥と考える人が多いことが挙げられます。現に日本では生活保護の基準に当てはまる世帯のうち、8割が給付を受けていないとのデータがあるようです。BIであれば、個人の尊厳を傷つけることなく、健康で文化的な最低限の生活を保障することができます。

 カナダでBIを実際に導入した社会実験のデータが2011年に報告されました。この社会実験の目的は、「無条件に支給される所得によって人々の労働意欲はそがれてしまうのか」という懸念に対して、実証的に検証しようというものでした。結果としては、労働時間の減少はほとんどなく、精神疾患や犯罪件数が減少し、学業成績が向上し、病院の入院期間が8.5%減少したことが明らかになっています。この結果を受けて、ヨーロッパやアメリカでBI導入の社会実験が行われています。

 もし現在、日本でBIをすぐに実施するとしたら、著者らは月に7万円、8万円の給付が適当であろうと述べています。予算としては年に100兆円を超えることになります。月に1万円程度から開始して徐々に給付額を増やすのが現実的であろうと井上氏は述べています。

実現するには財源など非常に多くの課題がありそうですが、現在の子どもたちの未来を考えると、そろそろBIに向けての準備が必要だと強く感じました。

今年のM1グランプリの感想  2018年12月7日

毎年楽しみにしているM1グランプリが終わりました。終わってから残念な騒動もありましたが、今年も楽しく見ることができました。

 個人的に一番受けたのは「ジャルジャル」の1本目のネタの「国名分けっこ」でした。子どもの遊びのような漫才でしたが、その独特のリズムにはまって「イン」「ドネシア」、「アル」「ゼンチン」がツボになって、笑ってしまいました。昨年までは「ジャルジャル」の世界についていけない感がありましたが、ダウンタウン松本さんが推すだけあるなと初めて感じました。

 「かまいたち」のポイントカードネタもとてもよくできた構成で、漫才のうまさを感じました。「ギャロップ」のコンパネタも、繰り返し見ると味があってよかったです。

 一番残念だったのは「ゆにばーす」でした。はらちゃんのボケを楽しみにしていましたが、盛り上がらないうちに終わってしまいました。「スーパーマラドーナ」も一昨年のような出来を期待していましたが、そこまではいきませんでした。

 「和牛」は2本とも「これぞ漫才」と言いたくなるネタで、芸術作品として仕上がっているように感じました。ただ、過去の実績から期待値がとても高くなっていた分、残念な結果になったのでしょう。3年連続2位もある意味すごい実績で、以前の「笑い飯」のようにM1名物になっていくのでしょう。 

 優勝した20代コンビの「霜降り明星」は、とてもテンポがよく面白かったです。オール巨人師匠の「最近の漫才はツッコミのボキャブラリーの多さが特徴で、みんなが思っているちょっと上をいくツッコミがよかった」とコメントしていました。そう思って録画で見直してみると、ツッコミの粗品くんのボキャブラリーが豊富かつ的確で、ここに漫才の面白さがあるのかと感心しました。

 今年も面白い漫才が多く、審査員の的を得たコメントにも十分楽しませてもらいました。今から来年も楽しみです。

ゲノム編集2018年11月30日

中国で受精卵の遺伝子を改変する「ゲノム編集」を施した双子の赤ちゃんが生まれたというニュースが報じられました。現時点では真偽のほどは明らかではありません。しかし、懸念されていたことがついに始まったか、と思わずにいられません。

 最近読んだ「ゲノム編集から始まる新世界」(小林雅一著:朝日新聞出版 2018)には以下のようなことが書かれています。

数年前に生物のDNAに書かれた遺伝情報を自由に編集する技術「クリスパー」が開発されました。従来の遺伝子組み換え技術は操作精度がとても低く、1万回から100万回に1回上手くいくレベルのものでした。「クリスパー」は狙ったDNAをピンポイントで改変できるようになり、操作精度は非常に高くなっています。また、操作そのものが比較的簡単で、専門家が指導すれば高校生でも使える技術だというのです。

この技術はすでに一部では実用化されて、農産物や家畜、魚などの品種改良が行われています。例えば、「変色しない白色マッシュルーム」「有害なトランス脂肪酸を発生しない大豆」「二日酔いしないワイン」「肉量を大幅に増加させた肉牛」「おとなしくて扱いやすいマグロ」などがゲノム編集で作られつつあります。

ゲノム編集は医療にも応用されはじめました。白血病の治療では、すでにドナーのT細胞をゲノム編集して患者の体内に注入して成功したと報告されています。

最も議論になるのは、ヒト受精卵のゲノム編集です。現時点では、100%確実に狙った遺伝子だけが改変できるのか、技術的な問題があります。

このような状況の中で、先日のニュースのようなケースは、HIV感染を防ぐためであっても、あまりにも軽率と言えます。

しかし、今後技術的な改良が飛躍的に進むことが予想され「デザイナー・ベビー」の誕生につながることが心配されています。「デザイナー・ベビー」は、様々な「質の良い」遺伝子を持った子どもです。高血圧やがんなどの生活習慣病にならない遺伝子、寿命が長くなる遺伝子、背が高くなる遺伝子、知能が高くなる遺伝子、美人・美男子になる遺伝子?などをゲノム編集で受精卵の遺伝子を改変するのです。「デザイナー・ベビー」は、これまでの人類とはレベルの違う新人類の誕生になるのではないかと考えられています。

これまでは倫理的な問題があり世界的に禁止されていましたが、人類は技術的にできることは何でも実現してきました。今後も中国などの比較的倫理的な規制の緩い国々で、ヒト受精卵のゲノム編集が次々に行われていくことが予想されています。

映画「ボヘミアン・ラプソディー」 2018年11月22日

 英国のロックバンド「QUEEN」を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディー」を見ました。

 QUEENは私の最も大好きなロックバンドで、高校時代にアルバムを買って毎日のように聴いていました。

 映画はボーカルのフレディ・マーキュリーを中心に描かれていました。フレディは映画では「パキ」(パキスタン人の意味)と言われていましたが、ペルシャ系インド人のようです。この民族性とイギリス文化とが融合したのか、フレディは特異な音楽的センスを示します。QUEENにお金を出す投資家に「ボヘミアン・ラプソディー」を評価されなかった時に、意見を曲げずに自分のスタイルを貫いたのは、QUEENらしくてかっこよく感じました。

 映画にはQUEENの代表曲がふんだんに織り込まれて、ライブ会場にいるような臨場感がありました。フレディを含めてQUEENのメンバーを演じた俳優の演技も素晴らしく、全く違和感がありませんでした。

 QUEENの曲は、どの曲もとても魅力的ですが、私の中でのベスト4は以下の通りです。

 第4位は「Keep Yourself Alive」。この曲を聴くと、とても元気になります。受験勉強をしていた時に聴いて、とてもテンションが上がったのを覚えています。

 第3位は映画の題名でもある「Bohemian Rhapsody」。初めて聴いた時には、正直言って「変わった曲だな」というイメージでした。しかし、何度も聴いているうちに聴くたびに新しい発見のあるとても魅力的な曲だと感じました。

 第2位は「Killer Queen」。とにかく切れのあるシャープな曲で、大好きです。この曲を聴いてQUEENのファンになりました。

 第1位は「Somebody to Love」。神様に祈るような荘厳な感じもする曲で、今でも折に触れて聴いています。

 この映画は、QUEENファンにはたまらない魅力が詰まっています。何度も鳥肌が立つほどテンションが上がりました。また、フレディ・マーキュリーの魅力、ゲイであることの苦悩や、バンド仲間との葛藤などもよく描かれています。

 特に最後の「ライブエイド」のシーンは圧巻で、ファンでなくてもここを見るだけでも価値があるでしょう。

 とってもいい映画です。

友だち関係に悩んだ時に読む本 2018年10月29日

菅野仁氏が10年前に書いた今話題の「友だち幻想」(ちくまプリマー新書)を読みました。

 著者は教育大学の教授で、教師になる学生に教える立場の人です。この本は友だち関係に悩んでいる中高生を対象に、人間関係の距離の取り方について、とてもわかりやすく書かれています。

 キーワードになっているのが「同調圧力」と「ネオ共同性」です。

「同調圧力」は、友だちといつも一緒に行動しなければいけない空気感です。たとえば、一緒にトイレに行く、LINEが来たらすぐに返事をするなどの圧力です。本当は幸せになるための「友だち」や「親しさ」なのに、逆に自分も相手も息苦しくなってしまうのです。この同調圧力は特に女子に顕著にみられます。

 この「同調圧力」を生み出しているのが「ネオ共同性」だと著者は分析しています。現代社会は多様な社会的価値観のために、自分自身の思考や価値観を確立することができずに不安が増大しています。お互いが群れること、SNSでいつもつながっていることで不安に対応しているのです。

 同調圧力で要求される「同質性」を象徴するのが「一年生になったら」という歌です。「一年生になったら、一年生になったら、友だち百人できるかな」という歌詞で「友だちをたくさん作れ」とプレッシャーを与えるのです。

「みんな仲良く」というのは幻想です。大人になっても嫌な人はたくさんいるので、そんな人とはなるべく距離をとった方が幸せに暮らせます。子どもにみんなと仲良くというのは、とても無理な要求です。同級生の中に合わない子もいるので、そんな子とは距離をとることを覚える方がいいのです。

 人間関係を「フィーリング共有関係」と「ルール関係」に分けて考えると頭が整理できると、著者は説明しています。「フィーリング共有関係」は、とにかくフィーリングを同じにして同じようなノリで頑張ろうとするものです。「ルール関係」は他者と共存していくときにお互いにルールを基本に成立する関係です。

 無理にフィーリング共有関係を求めすぎて、同調圧力で押しつぶされないようにすることが必要です。「気に入らない人とも並存する作法」が大切で、ちょっとムカツクと思ったら、お互いの存在を見ないようにするとか、同じ空間にいてもお互いになるべく距離を置くしかないでしょう。

 その他にもこの本に書いてあることはとても説得力があり、何度も読み返しました。友だち関係に悩んでいる中高生、また大人にもお勧めの素晴らしい本です。

健康にいいBig52018年10月1日

「ハーバード医学教授が教える健康の正解」(ダイヤモンド社 2018)を読みました。著者のハーバードメディカルスクールのサンジブ・チョプラ教授が、健康にいいことをピックアップして紹介している本です。

 現代の医学では、エビデンス(証拠)を重視しています。健康に関する研究に関しては、ある集団の人々を長期的に経過観察して、どのようなことをしていると病気になりにくいか、長生きできるかを統計学的に厳密に判定しています。

 また、そういった研究をたくさん集めてより強固なエビデンスがあるのかも判定しています。チョプラ教授は様々な研究を詳細に検討して「現時点で最も医学的に信頼できる健康にいいこと」を5つ紹介しています。

 最初に「コーヒー」です。これはとても意外で、私はむしろコーヒーは身体に悪いと思っていました。しかし、様々な研究のほとんどはコーヒーが身体にいいことを示しています。1日に28杯のコーヒーを飲む人は飲まない人より死亡率が低く、2型糖尿病、不整脈、がん、認知症のリスクが下がります。また、集中力や注意力、運動能力も向上します。ただし夕方以降に飲むと、眠れなくことがある点だけは注意点です。

 次に「ビタミンD」が挙げられています。これも私としてはとても意外でした。というのも、ビタミンDは体内のカルシウム濃度を上昇させる以外の働きはないと思っていたからです。現在の認識ではビタミンDはむしろホルモンと考えられ、様々な働きをすることがわかってきています。ビタミンDは骨折だけではなく、がんや糖尿病、認知症のリスクを下げる働きがあります。また、減塩よりも血圧を下げる効果があり、インフルエンザの罹患率を下げる効果が予防接種よりも優れているという研究もあります。

 ビタミンDを増やす方法としては、日光を浴びて紫外線を皮膚で吸収することが一番ですが、日焼け止めなどを塗っているとあまり増えません。日に当たる機会の少ない人はサプリメントの内服が有効です。サプリとしては「ビタミンD3」が勧められます。現時点では日本では「ビタミンD3」は発売されていないようですが、ネットでは外国の製品を購入することができます。ビタミンD3補充で高齢者の死亡率を大幅に減少させる効果が、多くの研究で示されています。日本人の9割以上はビタミンDが不足しているとのデータもあるので、多くの日本人にとってビタミンD3のサプリを摂取することは意味があるように思います(脂溶性ビタミンなので取り過ぎには注意が必要です)。なお、チョプラ教授が飲んでいるサプリはビタミンD3だけです。

 その他の項目は、運動、ナッツ、瞑想です。

 「運動」の効果としては、がんやうつ病の予防、ストレスレベルの低下などが実証されており、週に150分の早歩きで寿命が4年半伸びるとされています。

 「ナッツ」を毎日食べている人は心臓疾患、2型糖尿病のリスクが下がり、悪玉コレステロール値の低下、寿命を2年前後延長する効果が示されています。

 最後に「瞑想」は、不安とストレス、血圧、慢性痛、不眠を軽減する効果や認知機能や記憶力が上昇する効果が研究で示されています。また瞑想により記憶にかかわる海馬、自己認知や内省にかかわる脳の構造において、灰白質密度の増加が認められたとの報告もあります。1日に1530分の瞑想が有効だとされています。

 これらの健康に関するBig5は、ぜひとも実践したいと思っています。今のところ、ビタミンD3のサプリとナッツを毎日とることは開始しました。コーヒー、運動と瞑想はこれからの課題です。

劇団四季の「ノートルダムの鐘」 2018年9月24日

楽しみにしていた「ノートルダムの鐘」名古屋公演2日目に行ってきました。

 「ノートルダムの鐘」は、文豪ヴィクトル・ユゴーの1482年のパリを舞台にした作品をもとにしたミュージカルです。

 劇団四季のミュージカルは「オペラ座の怪人」「リトルマーメイド」に次いで3回目でしたが、私としてはこれまでで一番感動した作品でした。

 ジプシーの踊り子エスメラルダのダンスが素晴らしかったです(この日のエスメラルダ役は宮田愛さん)。目が釘付けになるほど妖艶な魅力を振りまいていました。人間は手足をこんなにうまく動かせられるのか、と感じるほど抜群のダンステクニックでした。これではノートルダム大聖堂の鐘引き男カジモドや、お堅い聖職者のフロローがエスメラルダの虜になるのも納得です。

 聖職者フロローの心の動きは理解できます。孤児でノートルダム大聖堂に保護され、とてもまじめに勉強をして出世してノートルダム大聖堂の大助祭まで上りつめた彼が、エスメラルダに心惹かれます。エスメラルダに「大聖堂に住めばいい」と提案したところ拒否されて、憤慨し逆に「邪悪な魔女」として逮捕しようとします。さらに捕まえてからも「自分の女になれば助けてやる」とだんだん悪魔のような心へと堕落していく様は、人間の恐ろしさをまざまざと感じさせられました。

 その他にも見どころ一杯で、何度も鳥肌が立つ場面がありました。とても人気のあるミュージカルですので、是非一度観に行かれることをお勧めします。

お聖さんの本  2018年9月17日

お聖さんこと、現在90歳の田辺聖子さんの本を読みました。乃里子さんシリーズと歌子さんシリーズです。

 まず、乃里子さんシリーズは昭和48年から56年に書かれた「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」の3冊です。30代前半の乃里子さんがとにかく魅力的です。性格はとっても開放的で、関西弁のテンポのいい会話が心地よく感じます。

 「言い寄る」では、金持ちの色男・剛や趣味人の渋い中年男に言い寄られる一方で、痛いくらい愛しているゴローには、どうしても言い寄れない。それでも仕事を楽しくやりながら、おしゃれに活き活きと生きているところが素敵です。

 「私的生活」では、五郎に失恋して金持ちの剛と結婚。夫の浮気と暴力や束縛で、頭のいい乃里子さんが徐々に自由にものを考えることができなくなる姿が切なく感じられました。

 「苺をつぶしながら」では、乃里子さんは35歳で離婚。仕事も充実して、一人暮らしの自由を満喫しています。結婚生活は刑務所、離婚は出所、元夫は看守と揶揄する一方で、別れた夫とはちょいちょいやり取りがあり、距離を置くと意外にいい関係になれるようです。

 三部作を読んで、乃里子さんの気持ちの流れがリアルに感じられ、女心が少しわかったような気にさせられました。こんなに女性の気持ちに入り込める小説は今までになかったように思います。

 歌子さんシリーズは、昭和56年から平成5年にかけて書かれた「姥ざかり」「姥ときめき」「姥うかれ」「姥勝手」の4冊です。

 76歳から80歳までの歌子さんは、乃里子さん以上に自由奔放でエネルギッシュ。60代まで会社経営で苦労をして、3人の息子を育て上げて、あとは自分のために生きていくのです。「わびさびなんてカビの親類みたい」と言って、年寄りくさいことが大嫌い。長男が同居を勧めても一人暮らしを愉しんで、やりたいことを思いっきり楽しんでいる歌子さんの生活は理想の老後だと思います。息子や息子の嫁たちとの会話もテンポのいい上品な関西弁で、思わず笑ってしまいました。

 乃里子さんシリーズも歌子さんシリーズも、時間を忘れるほど楽しませてくれました。お聖さんはエネルギッシュで魅力的な女性を描くのが、とてもお上手だと思いました。ある意味では理想の女性像なのかも知れません。これを機会に、まだまだたくさんあるお聖さんの本を読破していきたいと計画しています。

ハワイに行ってきました  2018年9月2日

夏の終わりにハワイへ行ってきました。

今回はパールハーバー(真珠湾)のツアーに初めて参加しました。真珠湾は太平洋戦争の始まった場所で、とても歴史的に重要な場所だと知っていましたが、これまでは何となく行きそびれていました。行ってみると、アメリカにとって非常に大切な場所とされていることがわかりました。ハワイでは一番の観光スポットのようですが、日本人の割合はかなり少ないそうです。

 まず、真珠湾攻撃を受けた戦艦アリゾナは、1177人の乗組員とともに今も真珠湾に沈んだままです。アリゾナ記念館は沈んでいる戦艦アリゾナに上に建てられ、それは上から見ると、ちょうど十字架の形をしてお墓のように厳粛な場所になっています。また、戦艦アリゾナと向かい合うような形で、引退した戦艦ミズーリが浮かんでいます。ガイドの方は、戦艦アリゾナが戦争の始まりを、戦艦ミズーリが戦争の終わりを示していると説明していました。やはりアメリカは演出が得意な国ですね。

 アメリカでは太平洋戦争の終結は昭和20年の815日ではなく、同年の92日としているのです。この日に日本が戦艦ミズーリの船上で、連合軍に対して降伏する文書にサインをしたからです。戦艦ミズーリのツアーでサインをした場所にも立ち寄りましたが、降伏文書の写しも展示されており歴史の重さを感じました。

 それ以外に、日本軍の特攻兵器の人間魚雷「回天」も展示されていました。人ひとり入るのがやっとの狭い空間で、100%の死を覚悟していた特攻隊員の気持ちを思わず考えてしまいました。回天の敵艦への命中率は3%だったとのことです。

 話は変わりますが、今回のハワイで「セグウェイ」に初めて乗りました。体重移動だけで動く乗り物ですが、最初に少しコツをつかめば楽しく乗ることができました。ハワイの気持ちのいい風景の中をセグウェイで走るのは、とても心地よかったです。

 また、今回の旅行でお勧めの食べ物は、今さらですがアサイーボウルです。アラモアナショッピングセンターで立ち寄ったブルーハワイライフスタイルというショップの「ブルーハワイクラシックボウル」が気に入りました。トッピングはグラノーラ、バナナ、ベリー、そしてハニーがたっぷり入ったとても美味しいものでした。

 次回ハワイを訪れた際は、またセグウェイを愉しんで、おいしい食べ物を探したいと思います。

腸内細菌叢について Part2 2018年8月26日

4月のPart1からかなり時間がたってしまいましたが、腸内細菌叢についてのPart2です。

 気管支喘息、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の原因として、数年前から経皮感作、皮膚のバリア機能の低下が大きく関与していることが明らかになってきました。もう一つのメカニズムとして、免疫細胞の一種「制御型T細胞(Tレグ)」がカギを握っていると考えられています。

Tレグは他の免疫細胞の暴走を抑えるなだめ役で、アレルギーを抑制するとても重要な働きをします。Tレグは未熟なT細胞が変化したものですが、未熟なT細胞がTレグになる時に腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が重要な働きをするのです。

 短鎖脂肪酸は、肥満を防止する働きもします。血液中に吸収された短鎖脂肪酸は脂肪細胞に作用して脂肪の蓄積を抑え、また交感神経を活発にして全身の代謝を促進することで肥満を防ぐのです。また、短鎖脂肪酸は腸の細胞を刺激してインクレチンを分泌させ、そのインクレチンが膵臓に作用してインシュリンを増やすことによって糖尿病を改善します。さらに、短鎖脂肪酸は腸のバリア機能を高めることにより腸内細菌やその毒素が血液中に漏れ出ることを防ぐ作用もします。

 このように万能薬のような作用をする短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸という3つの物質の総称です。酢酸は「お酢」のことですから飲めば同じような効果があることになりますが、腸内細菌に持続的に作ってもらう方がはるかに有効です。

 短鎖脂肪酸を作る腸内細菌(バクテロイデスなど)を増やすためには、自分の身体の中にいる腸内細菌にエサをあげるという考え方が重要です。食事の半分は腸内細菌を育てるものだと考えて、食物繊維を食べる必要があります。食物繊維のほとんどは人間には消化できませんが、短鎖脂肪酸を作る腸内細菌の大好物です。

 腸内細菌が私たちの健康にとても大きく関与していることがわかってきました。自分の健康にとっていい腸内細菌を育てていきたいものです。

          参考 「腸内フローラ 10の真実」(主婦と生活社 2015年)

高校野球 2018年8月15日

 初めて高校野球を見た記憶があるのは小学校3年生の時です。たまたま最初に見た習志野高校の左腕石井投手の牽制球が上手なところが気に入って応援していたら、そのまま勝ち進んで優勝したのを覚えています。それ以来50年以上、高校野球を毎年わくわくしながら見てきました。

 思い出深い試合は数えきれないくらいあります。昭和44年の松山商業と三沢高校の延長18回0対0での再試合。昭和48年の大会では江川投手のストレートの威力が圧倒的で、甲子園史上最高の投手だと今でも思っています。昭和58年に当時最強と言われた池田高校を、PL学園1年生のKKコンビ桑田と清原の活躍で破った試合も印象的でした。そのKKコンビが3年生になった昭和60年夏には、私の地元山口県代表の宇部商業と決勝戦を行い、接戦の末PLが4対3で勝ちました。その時は、とても悔しかった記憶があります。

 平成に入ると打撃のいい智弁和歌山高校のファンになりました。終盤になると「ジョックロック」が鳴り響いて、逆転する場面を何度も見ました。平成18年の対帝京高校戦では、9回の表に84から一挙に8点を取られて、128と逆転されました。しかしその裏に5点をとって、逆転勝ちをするすさまじい試合でした。

 甲子園には6回ほど足を運びました。そのうち3回は母校の岩国高校の試合の応援です。平成15年夏は2試合。対羽黒高校戦は60で勝ち、甲子園初出場以来8試合目で初勝利を挙げた感動的な試合になりました(初出場から7連敗は当時の甲子園記録でした)。2回戦の相手は春の大会で優勝し、春夏連覇を狙う広陵高校でした。父からは「負けるに決まっている」と言われていましたが、始まってみると打撃が絶好調で127と勝ってしまったのです。この年は次の3回戦も勝ってベスト8に入った岩国史上最強のチームでした。

 母校以外の試合では、平成17年と18年の夏の大会の決勝戦を見に行きました。17年は駒大苫小牧の夏の2連覇がかかった試合で、外野席もいっぱいで外野の一番上につま先立ちで立って見ていました。18年は駒大苫小牧と早実の決勝再試合で、その日は朝早くに並んで内野席を確保し、なんと、あの斎藤佑樹と田中まーくんの投げ合いを現場で観戦できたのです。

 今大会も面白い試合が続いています。大会8日目の星稜対済美の試合は、記憶に残る素晴らしい試合になりました。済美高校が8回裏に8点をとって97と逆転すると、9回表に星稜が2点を返して延長戦に突入。12回裏に1死満塁の済美のチャンスで2者連続で3ボール1ストライクとなるしびれる状況で、星稜のピッチャーが連続してストライクを投げて三振を取る場面は肩に力が入りました。タイブレークとなり、13回裏に2点を追う済美が無死満塁からサヨナラ逆転満塁ホームランを打った時には鳥肌が立ち、思わず涙が出てしまいました。

 こんな感動する場面が、いたるところにあるのが高校野球の魅力だと思います。甲子園の野球を見ていると、自分も高校時代に戻ったような気持ちになれるのです。

ワールドカップが終わって 2018年7月27日

ワールドカップが終わって、気が付いたらもう2週間近くたってしまいました。

 今大会1番の衝撃はドイツのグループリーグ敗北でした。前回大会優勝チームはグループリーグで敗退するというジンクスはありましたが、ドイツに限ってそんなことはないと思っていました。2試合目のスウェーデン戦でアディショナルタイムの最後のフリーキックで勝ち、「さすがドイツ、ゲルマン魂」と思っていました。まさか韓国に負けてしまうとは予想もしていませんでした。 

 期待していたメキシコも尻すぼみでまたしても決勝トーナメント1回戦の壁を突破できませんでした。アジア勢ではイランの健闘が素晴らしかったです。ポルトガル戦の最後のシュートが決まっていれば決勝トーナメントに進めていたのに、と思ってしまいます。

 日本はどうも大会前の評判が低い方がいいようですね。コロンビア戦もあまり期待せずに見ていたら最初の5分間で空気が全く変わってしまい、期待が大きく膨らみました。ベルギー戦の後半7分に乾のシュートで2対0としてからベルギーに1点返されるまでの17分間はとても幸せな時間でした。以前にサッカー経験者から「サッカーは2対0から1点返されると逆転されることが多い」という話を聞いたことがよみがえり、悪い予感がしました。その予感が当たり最後はベルギーの鮮やかなカウンターで負けて「これが現実だ」とショックを受けました。しかし、日本に実力で6回のワールドカップで3回も決勝トーナメントに進出したのは素晴らしいことだと思います。次回のワールドカップもあまり期待せずに応援したいですね。

 

ワールドカップが始まった! 2018年6月19日

サッカーW杯が始まりました。オリンピックを上回る世界最大のスポーツイベントです。

W杯を始めて見たのは、1986年のメキシコ大会の決勝でした。マラドーナの大活躍でアルゼンチンが優勝。それ以来4年に1回のW杯期間は個人的に「W杯特別期間」と称して、ほとんどの試合を録画してチェックしています。試合数の多い日には4試合あるので、結果を前もって知ってしまうことのないように注意して、早送りで見ています。

  私自身はJリーグやスペインリーグなどの欧州サッカーなどにはそれほど興味はなく、戦術などもよくわかりません。しかし、W杯の魅力はそれぞれの国がプライドをかけて戦い、国民が熱狂して応援しているところです。試合を見ながら、戦っているそれぞれの国の人たりが興奮していることも想像しながら見るのが楽しいのです。特に接戦になって最後の5分間はたまらない時間帯です。

  今大会も現時点で14試合見ましたが、ドイツ対メキシコの試合がとても面白かったです。前回大会でブラジルを完膚なきまでに叩きのめしたドイツは、私の中では今大会の敵役(かたきやく)です。一方メキシコのサッカースタイルは昔から好きで、個人的理由からも応援する理由ができたので、日本の次に応援しているチームです。試合はメキシコの健闘で白熱した試合になり、メキシコの鋭いカウンター攻撃で1点先制しました。その後は、ドイツの攻撃をかわして、メキシコが勝利。メキシコの選手、ファンが優勝したように喜び、ドイツの選手やファンのとても落胆した顔が印象的でした。

  メキシコ以外にも、人口35万人の小国アイスランド、負傷したエースのモハメド・サラーのいるエジプト、メッシのアルゼンチン、スター選手のそろったベルギー、素晴らしいパスワークのスペイン、打倒ドイツに燃えるブラジルなどのチームが気になります。

 日本の試合も含めてあと50試合楽しめそうです。

 

麻疹(はしか)の流行  2018年5月11日

愛知県で麻疹が流行しています。日本では2015年に麻疹排除が宣言されましたが、アジアやアフリカからの持ち込みによる麻疹はまだ認められています。

 麻疹は空気感染するとても強い感染力(インフルエンザの10倍)が特徴です。昔、南太平洋の島やアメリカインディアンの集落などの孤立した地域にヨーロッパ人が持ち込むと、住民のほとんどが感染したという記録が多数あります。また、日本でも江戸時代には約30年に一度爆発的に流行して、おさまるというサイクルを繰り返していました。免疫を持たない全員が感染して、ちょうど火事で言えば燃えそうなものがすべて焼き尽くしたところでやっとおさまっていたようです。

 また、おたふくかぜ、水痘や風疹などの感染症と比較すると、とても重症な感染症です。ワクチンが普及する前の1980年ごろまでは世界中で毎年200万人以上がなくなっていたと言われています。江戸時代の日本では「麻疹は命定め」とか「子どもの自慢は麻疹をやってから」とも言われ、かなり死亡率が高い感染症だったとされています。今でも発展途上国では5%程度の死亡率があり侮れません。

 予防法としてはワクチンしかありません。麻疹はヒトしか感染しない病気であり、世界中のワクチン接種率が95%以上になればほとんど流行がなくなります。近いうちに天然痘のように地球上から撲滅できる日が来ることを期待しています。

腸内細菌叢について  Part 1 2018年4月25日

最近、話題になっている腸内細菌叢について数冊の本を読んでみました。腸科学(ソネンバーク夫妻 著 早川書房 2016年)には、1歳までの乳児期の腸内細菌叢について最近の知見がまとめられていました。

 腸内細菌は大人の身体では1.5kg程度になり、ヒトは腸内細菌との共生している生き物だとも言えます。ヒトの身体ができない働きを細菌が補っています。特に免疫との関連が強く、アレルギー、肥満などに強く関与していることが研究からわかっています。自閉症との関連を指摘する研究も最近は出ています。

 お母さんのおなかの中にいる胎児の腸は無菌状態です。経腟分娩で出生する赤ちゃんは生まれる時に母親の腸内細菌を吸い込みます。一方、帝王切開で出生した赤ちゃんは母親の腸内細菌を吸収する機会がなく、最初に取り込まれる細菌は取り上げた看護婦さんや手術室の細菌が最初に腸内に住み着きます。妊娠中の母親の腸内細菌は赤ちゃんに適した種類で、より好ましいもののようです。

 次に、母乳の効果について。母乳にはヒトの直接分解吸収できないヒトミルクオリゴ糖が含まれており、バクテロイデス属菌などの人にとって有用な菌の定着に強くかかわっています。

 離乳食が始まって、初めて植物性の食べ物が入ってくると、乳児の腸内細菌叢は大きく変化します。菌の多様性が一気に増えて、わずか1日で様変わりします。離乳食が始まって、急に便秘や下痢をする子がいるのもうなずけます。

 乳児期の抗菌薬(抗生物質)投与は、乳児の腸内細菌叢を大きく乱します。1歳までに腸内細菌叢の大体のバランスが決まるために、本当に必要な時以外には抗菌薬の内服をしない方が好ましいとされています。

古事記が面白い!  2018年3月25日

読書会で課題本になっていた現代語で書かれた「古事記」を初めて読みました。読書会には参加できませんでしたが、読んでみるととても面白い! 日本人には必読の本だと思いました。

 読んだ本は「現代語 古事記」と「古事記 完全講義」(いずれも学研)の2冊で、著者は旧皇族の竹田恒泰氏です。竹田氏はテレビの「何でも言って委員会」で過激な発言をする人というイメージでしたが、古事記の魅力をとても上手に伝えています。古事記といえば、天皇家の立派な記録かと思いきや、とんでもありませんでした。

弟が兄を残虐に殺して天皇になったり、親子あるいは兄弟同士で一人の女を取り合ったり、同じ両親から生まれた兄と妹の禁断の愛の話など、こんなこと書いていいのかなと思うエピソードの連続です。

 これまで知らなかったことで興味深かったことが3つありました。

 一つ目は、須佐之男命(スサノオノミコト)の有名なヤマタノオロチ退治の話。須佐之男命は天照大神の弟にあたる神様です。スサノオノミコトがやったことは、①おじいさんとおばあさんに命じて、8個の酒樽を用意させて運ばせる。②ヤマタノオロチが酒を飲んで眠っているところで切り付けて殺す。 ということだけで、戦ったわけではなく騙し討ちをしてやっつけただけでした。

 二つ目は、倭建命(ヤマトタケルノミコト)について。父の景行天皇が倭建命に「ちょっと態度の悪い兄貴に言っておけ。教え諭しておけ」と言ったところ、兄がトイレに行った時につかみ潰して手足を引き裂いて、袋に包んで捨てています。結局、景行天皇は倭建命を恐れて、次々に難題を与え、最後に倭建命は死んでしまいます。

 三つ目は、日本の神様たちの住む天上世界からは地上世界は見えない様です。神様が私たちのことをいつも見ているというのは嘘だというのです。ただし、どうも泣き声だけは天上世界の神様に届くというのです。神様に何かを訴えたいときには声を出して泣いた方がいいようです。

 いずれにしても漫画のような話の連続で、愉快に読むことができます。日本の神様たちや、その子孫とされる天皇家の人たちがとても人間臭いのがいいです。一方で理想的な天皇とされる第十六代天皇の仁徳天皇は、民が貧困にあえいでいる様子に気づいて3年間徴税を中止し、天皇の住む宮殿は荒れ放題になったというのです。

 竹田氏は「天皇は国民の幸せを祈り続ける存在」という見解を述べていますが、古事記を読んでみると何となくわかった気がしました。

行動経済学  2018年3月11日

 昨年のノーベル経済学賞は、米国のセイラー教授が「行動経済学」の研究で受賞しました。最近よく耳にする「行動経済学」とは、従来の経済学では説明しきれない人間の経済行動を人間の心理という視点から解明しようとする経済学です。以前から興味があってこの分野の本を数冊読んできましたが「行動経済まんが ヘンテコノミクス」(マガジンハウス)は、とても面白く読むことができました。

著者はNHK教育テレビの名物番組「ピタゴラスイッチ」の企画制作をしている佐藤雅彦教授等です。

漫画で実例を示して、行動経済学の理論をとても分かりやすく示してくれます。

例えば……

悪ガキたち塀に落書きをされて困っていたおじいさんが、対策として落書きに対してお小遣いをあげるようにしました。その間に子どもたちの目的が自分たちの楽しみから、お小遣いをもらうことにすり替わってしまったのです。その後、おじいさんがお小遣いをあげなくなったら、子どもたちは落書きをやめました。このように報酬が動機を阻害することを、アンダーマイニング効果(土台を壊すという意味)と呼んでいます。

その他にも、アンカリング効果(基準が判断に影響を及ぼす)、おとり効果(選択肢を生み出すことで、市民権を得る)、参照点依存性(基準に引っ張られて、価値が変わる)などが漫画でわかりやすく示されています。

 

 世の中には行動経済学の理論を利用して、うまく商売をしている人たちがいるものだなと感心してしまいました。

給食嫌い2018年2月26日

当院の外来には、給食が嫌いな子も多く来院しています。私自身、給食がとても苦手だったので、気持ちがよく分かります。

 昔の給食は、アルミニウムを加工した鈍い金色や銀色のアルマイトの食器を使用していました。見るからに味気なく、食欲が減退しました。特に苦手だったのは、クリームシチュー、八宝菜、煮物、魚、みんなが好きだったスパゲッティでした。これらのおかずを食べようとすると吐き気がして、とても口に入れられませんでした。

 同級生たちはおいしそうに食べていましたが、クラスで私を含めて23人が、しばらく居残りをさせられました。私は唯一食べられるパンと嫌いな牛乳を少しだけ飲みながら、時間がたつのを待っていました。幸い、私の小学校では無理矢理に食べさせられることはなく、掃除時間になるとやっと解放されました。

 私の家は決して裕福ではなく、家でおいしいものを食べていたわけではありませんでした。ただ、私を含めて母も弟も偏食で、遺伝的要素が大きかったのだと思います。

 給食の影響で、病院食も給食と同じ雰囲気がして、いまだに苦手です-------。しかし、現在は多少の好き嫌いはあるものの、食材で特別に食べられないものはなくなりました。

 時々、保育園・幼稚園や小学校の先生が無理に給食を食べさせるという話を聞きます。そのために学校に行くことを嫌がる子どもたちを何人も見てきました。「食育」という名のもとに偏食をなくそうとしているようですが、無理やりに食べさせるのは逆効果です。本人が嫌がっているのに、口に給食を押し込むのは「虐待」に当たるのではないでしょうか。大多数の子どもでは、年齢とともに徐々に食べられるものが増えていき、偏食は徐々に改善されます。

 偏食に関しては、焦らずに成長を待つことも必要だと思います。

新しい経済システム     2018年2月18日 

「お金 2.0 新しい経済のルールと生き方」(佐藤航陽 著 幻冬舎 2017)を読みました。著者は1986年生まれの気鋭のベンチャー企業の経営者です。新しい経済についての考え方をとてもわかりやすく教えてくれる本で、3回読み返してしまいました。

 例えばビットコインなどの「仮想通貨」について。私たちの世代からすると、仮想通貨は胡散臭いイメージしかありません。しかし、仮想通貨は従来の法定通貨とは全く違う仕組みでできているようです。ちょうどルールの異なる野球とサッカーを比べるようなものだと述べています。現在進行形で新しい経済システムが作られている状況だということがわかりました。

 新しい経済システムの基本的な考え方としては、「価値主義」をあげています。現在は資本主義が考える価値あるものと、世の中の人の考える価値あるものの間に大きな溝ができています。価値を保存・交換・測定する手段がお金である必要がなくなってきています。従来の有用性としての価値に加えて、愛情・共感・好意などの内面的な価値や慈善活動やNPOなどの社会全体の持続性を高めるような活動の価値を評価する考え方です。テクノロジーの進歩によって内面的な価値や社会的価値を経済システムに取り込むことが可能になりつつあります。

 イギリスの作家ダグラス・アダムスの興味深い言葉が引用されていました。

人間は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳のあいだに発明されたテクノロジーは新しくエキサイティングなものと感じられ、35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。

35歳をはるかに超えた私も新しいテクノロジーや考え方にも少しは対応できるように、時々若い有能な人の本を読んで柔軟な考え方を学んでいきたいものです。

おらおらでひとりいぐも 2018年1月28日

63歳の新人作家の若竹千佐子氏の芥川賞を受賞した「おらおらでひとりいぐも」を読みました。夫に15年前に死なれ、2人の子どもたちと疎遠になった74歳の桃子さんのお話です。歳をとって孤独な生活での心情が桃子さんの故郷の東北弁で語られます。

 おらばりでないおん。なんとかなるおん。

 おらはひとりでまっちゃ、ひとりはさびしいでまっちゃ。

 

読んでいて気に入った(気になった)個所をいくつか挙げてみました(一部改変)。

 1.楽しみにしていた娘の直美からの電話は借金の申し込みだった。答えられずにいると「なによ。お兄ちゃんだったら、すぐに貸してあげる癖に」とキレられた。

 ◆疎遠になっていて久しぶりに連絡してきた娘の意図が借金の申し込みなのは、悲しいですね。

 

2.ある日振り返ると白髪交じりの蓬髪の女がいる。山姥(やまんば)だと思ったが、すぐに自分の姿だと気づく。現代の山姥はかつての新興住宅地にひっそりと住んでいる。

 ◆一人暮らしが続くと身なりにも気を配らなくなり、山姥のような姿になるとは…。

 

 3.退屈な日々、仕方がねがえん、おら年をとってしまったのだものとわが身を慰めて、それでは一番輝いていたのはいつだったのだろう。子供の時分、周造(夫)と出会った頃、小さな子供人を抱えて懸命に生きていたころ。幸せで満ち足りていたといえば確かにあの頃なのだろう。だが、これまで生きてきた中で心が打ち震え揺さぶられ、桃子さんを根底から変えたあのとき、周造が亡くなってからの数年こそ、自分が一番輝いていたのではなかったかと桃子さんは思う。

  ◆絶望した時が人生で最も自分の心と向かい合えることができます。心を根底から揺さぶられ、生きている実感があるのだと思います。

 

4.亭主が死んで初めて、目に見えない世界があってほしいという切実が生まれた。(中略)おらの思っても見ながった世界がある。そごさ、行ってみって。おら、いぐも。おらおらで、ひとりいぐも。

  ◆孤独の中で目に見えない世界を自分で作りあげて、前向きな気持ちになる桃子さんの言葉が「おらおらひとりでいぐも」なのですね。

 

 老年期に人生を振り返る時にはこの本にあるような様々な思いが湧いてくるのでしょう。心の中に地球46億年の歴史のように幾重もの地層があり、それぞれの地層から時々溜まったものが噴出して心の中で会話を始めるのでしょう。

 これまでに読んだことのないタイプの小説で、とても楽しめました。

サンフランシスコ   2018年1月14日

年末年始に16年ぶりでサンフランシスコに行ってきました。研究のために半年間過ごした都市です。

 坂道の多い街中の様子、ゴールデンゲートブリッジやケーブルカーなどは懐かしかったです。行きそびれていたフィッシャーマンズワーフにも行き、クラムチャウダーで有名なBOUDINでランチをいただきました。

 サンフランシスコは現在バブルに沸いています。地元の人の話では、これまで5000万円で買えた一軒家が1億円に値上がりしているとのことでした。近隣にシリコンバレーがあり、ヤフー、アップル、フェイスブック、ツイッターなどの世界から注目される企業の本社が集まっています。いわゆるベンチャー企業(当地ではスタートアップ企業ということの方が多いようです)が、世界で最も多く誕生しているホットな都市です。特に企業としての評価額が10億ドル(約1200億円)以上で非上場の有力企業をユニコーン企業というそうですが、いろんなお店でユニコーンのぬいぐるみを見かけました。

 全米で最も歩きやすい街とも評されていますが、街を歩くとホームレスの人々を頻繁に見かけます。何か麻薬をやっているかのような怪しい人も多く見かけました。20181月からカリフォルニア州で大麻(マリファナ)が解禁されました。それにしても驚いたのは、ホテルの前をホームレス風の男性が自分の腕に注射をしながら歩いている姿でした。

 カリフォルニアが大麻解禁に踏み切ったことで、アメリカ全土に広がる様子です。なんでも大麻解禁により4.5兆円の経済効果があると聞きました。アメリカはいろいろと弱点も多い国です。しかし、科学や医療の進歩ためには、世界にアメリカがないと困るのも事実です。物凄いエネルギーがあり様々な実験をする愛すべき国だと思います。

 最後に、16年前にはサンフランシスコの食事はどこに行ってもおいしいと思えなかったのですが、とてもおいしくなっていました。

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