小児科・アレルギー科・小児皮膚科

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今年のM-1      2019年12月29日 

今年のM-1は例年にも増してとても楽しめました。特に、優勝したミルクボーイの「コーンフレーク」ネタは圧巻でした。

 特に、優勝したミルクボーイの「コンフレーク」ネタは圧巻でした。見た目からはあまり期待してませんでしたが、ネタが始まってからは笑いが止まりませんでした。これまで人生で見てきた漫才の中でも間違いなくベスト3に入るネタで、M-1史上最高得点も納得です。M-1が終わって1週間に12回見ましたが、見るたびに笑えます。言葉のチョイスが信じられないほど素晴らしく、話の流れも完璧だと感じました。

 かまいたちのネタも素晴らしかったです。「UFJ」ネタも「トトロ」ネタも構成としゃべりの技術が秀逸で、すごいコンビだと思いました。ボケの山内さんが面白いのは知っていましたが、ツッコミの濱家さんがこんなにできる人だとは知りませんでした。

 M-1が始まる前に期待していたのは和牛とインディアンスでした。和牛は確かに面白いネタでしたが、ミルクボーイの勢いとかまいたちの技術には見劣りしていたことは否めませんでした。インディアンスは期待していましたが、ネタがあまり良くなかったのか田淵さんのボケが岩滑りしていた印象で残念でした。しかし、きっと来年は優勝に絡んでくるだろうと思います。

 その他にも面白いコンビが多く、とても楽しませてもらいました。審査員も上沼線は欠かせないですね。来年も今から楽しみにしています。

乳幼児期の言語環境の影響  2019年11月8日 

子どもの言葉の発達に家庭での言語環境が影響していることを明らかに証明した研究はこれまでありませんでした。「3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ(明石書店 2018)は、粘り強い研究で家庭の言語環境が子どもの言葉の発達に与える影響を定量的に明らかにした研究を示しています。

 この研究は、アメリカの様々な社会経済レベルに属する42家庭の子どもを生後約9か月から3歳まで追跡観察したものです。毎月1度、1回当たり1時間、観察者が家庭内での会話を録音し、様子を観察ノートに記録しました。これらの記録と3歳の時点での子どもの語彙の関連をみています。

 社会経済レベルの最も高い家庭では、計算上3歳の終わりまでに聞く言葉の数が4500万語に対して、最も低い家庭では同じ期間に聞く言葉の数が1300万語で、3000万語以上の差があるました。また、「いい子だ」「その通り」といった肯定的な言葉と「ダメな子」「間違ってる」といった否定・禁止の言葉にも大きな違いが認められました。4歳の時点で、社会経済レベルの最も高い家庭では肯定的な言葉が66万4000回、否定禁止の言葉が10万4000回に対して、最も低い家庭では肯定的言葉が10万4000回に対して、否定禁止の言葉が22万8000回になっていました。

 3歳の時点での子どもの語彙数をみると、社会経済レベルの最も高い子どもが1116語に対して、最も低い家庭では525語と倍以上の差が認められました。また社会経済レベルの低い家庭でも1日に話す言葉が670語から1万2000語と大きくばらつきがあり、やはり3歳時点での語彙数に大きな違いがありました。

 この本では、初期の言語環境をよくするための「3つのT」を勧めています。一つ目のTは、「Tune In」(注意とからだを子どもに向ける)で、子どものしていることに興味を持ち集中することがまず大事です。二つ目のTは「Talk More」(子どもとたくさん話す)で、保護者がしていることを話したり、子どもがしていることの実況中継をするのです。三つ目のTは「Take Turns」(子どもを対話のやり取りの中に引き込む)で、特に子どもの反応を辛抱強く待つことが重要です。

 3つのTの対応で、子どもの算数の能力、読み書きの力、粘り強さなどがより良い方向に向かうと考えられます。言葉の力には子どものもって生まれた力が関与しているところも一定以上ありますが、3歳ごろまでの過程の言語環境の影響が大きいのも確かです。家庭での夫婦間での会話も含めて大切にしていきたいものです。

ラグビーワールドカップ  2019年10月16日

ラグビーワールドカップで日本中が盛り上がっています。

 13日に行われたスコットランド戦は特に力が入りました。テレビで見ていても、ラグビーの試合では自然に身体が動いてしまいます。フォワードが押し合っている時には身体が前に動き、途中で心拍数が上がり少し苦しくなりました。この試合では、最初にスコットランドに先制トライを奪われて「やられるのではないか?」と心配になりましたが、松島選手のトライから前半で怒涛の3トライでリードする意外な展開でした。後半はスコットランドに追い上げられてひやひやしましたが、最後はディフェンスががんばり抑え込んだのはさすがでした。素人目からは、福岡選手の素晴らしいスピードで取った2トライが、勝利を決めたように感じました。

 それにしても日本のラグビーは本当に強くなりました。

 私は1987年のワールドカップラグビーの第1回大会からのファンで、ラグビーワールドカップを見るために衛星放送に加入したものです。ニュージーランド代表オールブラックスのスピードに富んだ力強いプレーのファンでした。第1回大会は、期待通りオールブラックスが素晴らしいプレーで優勝し、感動したものでした。日本も参加していましたが、豪州には善戦したものの、イングランドには大敗、アメリカにも競り負けて3連敗でした。その後も1991年の第2回大会でジンバブエに勝ったものの、その後は負け続け、2011年の大会まで2引き分けを挟んで16連敗を喫していました。ラグビー強豪国との試合を見ていても、ワンパターンでした。相手にトライを取られる。日本のキックで試合再開。相手にボールを取られる。相手フォワードがボールを持って突っ込んでくる。日本の防御網が崩れる。相手にトライを取られる。 日本がコチョコチョ動いても、結局フォワードの体格・体力差が大きすぎて試合にならないのです。ある程度以上の体格・体力があることがラグビーの国際試合を行う必要最低条件だと思っていました。

 それがどうでしょう。日本は体格・体力で負けないものを身に着けて、ラグビー強豪国のアイルランド、スコットランドと互角に戦って勝つようになったのです。前回大会の南アフリカ戦の勝利は相手の油断もあったように思いますが、今回はまぐれでなく実力で勝っています。確かに外国出身選手の活躍もあります。しかし、リーチマイケルキャプテンをはじめとする彼らが、日本チームのためにがんばっている姿を見ると、日本生まれかどうかはどうでもよくなります。

 決勝トーナメントの1回戦の対戦相手は南アフリカです。あの分厚いディフェンスを日本がぶち破るのはとても難しいと思いますが、ぜひ勝ってほしいものです。もし勝てば決勝で日本対オールブラックスというカードが実現するかもしれません。しばらくは、夢を見ていたいものです。

AIと子どもの読解力  2019年9月23日

AIが東大入試に挑戦した「東ロボくん」プロジェクトの中心人物だった新井紀子氏の「AI vs.教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社 2018)を読みました。この本はビジネス書大賞2019を受賞した話題作です。この本の中での新井氏の主張はまとめると、以下の通りです。

 AIの能力では、東大入試に合格するレベル達することは不可能であることを証明するためにこのプロジェクトを始め、実際に不可能だったことを証明した。原理的にAIの能力に限界があることは明らかであり、ヒトの知的レベルを超えるいわゆる「シンギュラリティ」は永遠に来ない。問題は、AIの進化により近い将来に人の仕事がAIに奪われることである。その時に重要なのは、人間にしかできない能力を磨くことである。しかし、子どもたちの読解力を調査してみると、多くの子どもたちはAIよりも読解力の点で明らかに劣っており、教科書も満足に読めていない。しかし、子どもの読解力をあげる方法論は確立していない。 

 AIの能力については、研究者の間でも議論があり、将来的に人間の知的能力を超えることはできるとの考えもあるようです。しかし、「子どもたちの読解力が低下している」との認識は多くの人が共有しています。

 それでは、「読解力」とは具体的にどのようなもので、具体的にどのようにすれば読解力が伸びるのでしょうか? 一つの回答を示しているのが、ふくしま国語塾の福島隆史です。

 福島氏は、「本当の国語力が驚くほど伸びる本」(大和出版 2009)の中で、国語力(読解力とほぼ同義)は「論理的思考力」であると述べています。その要素は「言いかえる力」「くらべる力」「たどる力」の3つであると言い切っています。

 「言いかえる力」は抽象化する力と具体化する力を示しています。例えば、「みかん、ぶどう、バナナ」はつまり「果物」、逆に「果物」はたとえば「みかん、ぶどう、バナナ」と言いかえる力です。この「言いかえる力」で発信者と受信者のイメージを一致させ、理解を促進するのです。

 「くらべる力」は「暑いと寒い」のような正反対の言葉や「昼と夜」のようなワンセットの言葉を使いこなして、説得力をパワーアップさせます。

 「たどる力」は因果関係を理解する力です。例えば「「公園にごみ箱があった。だから、ごみ箱を撤去した」では多くの人は納得しません。「公園にごみ箱があった。そのため、カラスがごみを荒らし始め、公園が毎朝よごされるようになった。だから、ごみ箱を撤去した」という風に丁寧に言いかえることで多くの人を納得させることができます。

 福島氏はこれら3つの力を伸ばす具体的な方法も示しています。彼のいう「国語力」についてのとらえ方は、中学受験での豊富な実績もあり、とても説得力があります。 

 一方で、小学校での国語教育(例えば、ひたすら漢字の練習をする、など)は、本当に子どもたちの読解力を伸ばせるのか疑問に思います。国語力(読解力)は子どもにとって最も重要であることに間違いはなく、学校での国語教育方法の改善が必要なのではないでしょうか。

100分de名著       2019年7月30日

 私は好きなテレビ番組は録画して見ることにしています。常に8番組前後を録画していますが、なかでもEテレの「100分de名著」は2011年から8年間ほぼ欠かさず見ています。

 この番組は『毎回古今東西の名著にスポットライトをあて、その作品の奥深さを、「噛み砕いて解説したらこの人の右に出る人はいない」というプレゼンターがわかりやすく、かつ楽しく解説するというものである。題名の「100分」とは毎週25分間、4回で100分間に渡ってその作品の背景他を詳しく解説するという狙いで付けられた。』とWikipediaには紹介されています。

 本当に様々な名著が紹介され、プレゼンターの先生がかなり思い入れを持って詳しく説明してくださるので、とても楽しく見ることができます。

 これまでに様々な名著が紹介されてきましたが、とっつきにくい思想・哲学系の本が取り上げられている時にはテキストも購入して見ました。ニーチェの「ツァラトゥストラ」、フロムの「愛するということ」、スピノザの「エチカ」、マルクス・アウレリウスの「自省録」、道元の「正法眼蔵」、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」などは特に興味深かったです。

 スピノザの「エチカ」は、プレゼンターの國分功一郎氏の解説がわかりやすく、スピノザの思想に少し触れることができたような気がしました。ニーチェの「ツァラトゥストラはかくかたりき」は本も読みましたが、番組の解説がとても参考になり、最後まで読むことができました。

 思想・哲学系以外にも、「モンテ・クリスト伯」「高慢と偏見」「赤毛のアン」「アルプスの少女ハイジ」などの有名だけど読んだことのない小説の紹介も、作品の奥深さを伝えてくれる解説に引き込まれていきました。

 この番組をさらに魅力的にしてくれているのは、プレゼンターの話を引き出してくれる伊集院光氏の話術です。民放の番組ではクイズ番組でよく見る伊集院氏ですが、プレゼンターの話をしっかり咀嚼して、コメントする能力には脱帽です。

 この番組を一つの指標にして、読書の幅を広げていかれることをお勧めします。

池谷裕二さんの本  2019年6月9日

 ヒトが何を基準にものを考えて、様々な選択をしていくのか?どのように学習をしていくのか?脳はどんな機能を持っているのか? 私にとっては、最も関心のある分野です。

 脳の働きについては毎月多くの研究報告が論文として発表されますが、その数はあまりにも膨大でフォローすることは不可能です。重要な論文の多くは、英語で書かれており実験内容も複雑で、その意義を見抜くには豊富な知識が必要です。

 脳の働きに関する最新の論文の内容をとても分かりやすく信頼できる形で紹介してくださるのが、東大教授の池谷裕二さんです。これまでにも何冊か著書を読んできましたが、週刊朝日の連載エッセイをまとめた「パテカトルの万能薬 できない脳ほど自信過剰」(朝日新聞出版 2017)も面白く読みました。

 それぞれが3,4ページで、私にとってはとても分かりやすく書かれています。普段外来でもお母さん方にお話ししていることも、動物実験や人間での研究からわかりやすく解説されています。

 例えば、「しつけは叱ってはダメ」。ネズミの実験では、報酬だけの方が報酬と罰の組み合わせより学習効果が上がります。罰だけでは全く学習が進まない結果でした。理由は単純で叱ると探索しようとする意欲が減ってしまうのです。また若者に3つの異なる条件でテレビゲームで立体迷路の練習をして、テストした研究の結果が示唆に富んでいました。①成功したらそれに応じた報酬が得られる。②初めに報酬金が一定額与えられ、失敗するたびにそこから減額される。③報奨金なし。結果は予想通り①が最も成績が良かったのですが、②と③の結果が意外でした。報奨金のない③の方が成績が良かったのです。どうも減点法は人間の脳には向いていないようです。

 その他にも、とても面白いトリビアがたくさんありました。「我慢すると忍耐力が下がる」「ぼうっとすることが記憶力を高める」「ヒトは過去を都合よく歪める」「気が合うとはどんな状態か?」など、つい人に話したくなるような豆知識が満載です。

 それにしても研究者としても非常に忙しい池谷さんが、このような一般向けの本を数多く出されていることには頭が下がります。最近読んだ中村うさぎさんとの共著「脳はみんな病んでいる」(新潮社 2019)の中で、池谷さん自身が精神科医の診察を受けて「自閉症スペクトラム」と診断されたことが書かれています。とてもユニークな活動の秘密の一旦が、わかったような気がしました。

小児期のトラウマの影響  2019年5月19日

科学ジャーナリストのドナ・ジャクソン・ナカザワ氏が書いた「小児期トラウマがもたらす病」(パンローリング社 2018)を読みました。小児期の様々なトラウマが、様々な病気の原因となっているという趣旨が書かれています。この本ではトラウマを虐待やいじめなどに限定せずに、両親の離婚や死亡、親族の精神疾患や刑務所収監、本人の病気や事故なども含めてACE (Adverse Childhood Experiences:逆境的小児期体験)として扱っています。ACEという言葉はこれまで聞いたことがなかったのですが、PubMed(世界の医学論文検索システム)で検索すると、2000以上の論文がヒットしたので、かなり一般的に使われている言葉のようです。

 ACE(逆境的小児期体験)が多いほど、がん、糖尿病、自己免疫疾患、過敏性腸症候群、脳血管障害、うつ病、不安障害などの病気に罹患しやすいことが報告されています。

 幼児期の強いストレスにより遺伝子が影響を受けて変化し、ストレス制御システムが損傷をうけます。そのため脳が慢性的な炎症にさらされ、ミクログリアという脳細胞の10分の1を占める非神経細胞が活性化して正常な神経細胞を飲み込んで破壊するようになります。このために多くのACEを経験した人は神経細胞の数が減少し、様々な疾患に罹患しやすくなるのです。  

 女性の脳の方が男性よりも傷つきやすいこともわかっています。エストロゲンが多く分泌されることなどで、男性より免疫システムが異常をきたしやすくなり、不安障害やうつ病、自己免疫疾患になりやすくなります。また現代社会では女性の方が男性より小児期に逆境的体験を受けやすいようです。

 それでは逆境を経験した人はどのようにして回復することができるのか、についての研究も進んでいます。数ある方法の中で、マインドフルネス瞑想は有効性がよく知られている方法です。呼吸に集中し、頭の中にある考えを一つずつ挙げ、それらを開放し、自分と考えを切り離してみる。心配することをやめて、今の瞬間を感じる。これだけで脳を修復することができるのです。

 この本を読んで、逆境的小児期体験などのトラウマという視点から病気を考えることの必要性を改めて感じました。また、その回復の手助けが少しでもできるようになりたいと思います。

今年の本屋大賞    2019年4月25日

本屋大賞の本は毎回面白いものが多いので、今年もさっそく買って読んでみました。

 今年の本屋大賞は、瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」。実の母が亡くなって、実の父の他に義理の母一人と義理の父二人にバトンタッチされるように育てられる女の子の話です。

 家庭環境からは悲しい話を想像させられますが、主人公の優子さんがとてもいい人たちに囲まれて育っていく、心温まる話です。

 第1章の書き出しからユニークです。

 【困った。全然不幸ではないのだ。少しでも厄介なことや困難を抱えていればいいのだけど、適当なものは見当たらない。いつものことながら、この状況に申し訳なくなってしまう。】

 高校2年生の優子さんが、担任の先生から悩み事はないか、と聞かれた時の心の声です。

 この時の、37歳の東大卒のサラリーマンの森宮さんが義理の父親です。森宮さんは一人で優子さんを育てているのですが、「親とはこういうものだ」という思い込みが強く、常識からずれていることもたくさんあります。始業式の日の朝はがんばるためにカツ丼を作る、優子さんが友だちとトラブルがあった時には、餃子を連日作ってスタミナをつけさせてはげまそうとしています。

 不思議系のキャラクターの森宮さんですが、次のような素敵なことを言っています。

【「優子ちゃんと暮らし始めて、明日はちゃんと二つになったよ。自分のと、自分のよりずっと大事な明日が、毎日やってくる。すごいよな」「どんな厄介なことがついて回ったとしても、自分以外の未来に手が触れられる毎日を手放すなんて、俺は考えられない」】

 心の底から、このように思えたらとても幸せになれそうです。

 また、ありがた迷惑とも思える義父のやることを、優子さんがさらりと受け取っている感じがとても素敵です。

 自由奔放な義理の母の桃花さんも、優子さんをとてもかわいがり、より良い環境を作るために奮闘します。もう一人の義理の父の泉ヶ原さんは大きい包容力で温かく見守っています。

 いい人たちばかり登場するおとぎ話のようなお話ですが、最後には感動してほろりとする素晴らしい本です。

 瀬尾さんの本がとても気に入ったので、駅伝に参加する6人の中学生を描いた「あと少し、もう少し」と、義理の母と男の子の絆を描いた「卵の緒」も読みました。どちらも、とても面白い本でした。特に「あと少し、もう少し」は、部長の桝井、元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介の6人のお互いの関係性や微妙な心理が見事に描かれていて、一気に読んでしまいました。

 ほっこりしたい気分の時には、瀬尾さんの本を読むことをお勧めします。

ホモ・デウス     2019年4月17日

前作「サピエンス全史」で世界に衝撃を与えたハラリ氏の続編で、人類の未来について書いた本です。読んでみると随所に示唆に富む考察がされていて、3回読み直しました。

 ハラリ氏は、現代社会を「人間至上主義」の時代ととらえています。近代以前の人間は、力を放棄するのと引き換えに、宗教などから自分の人生の意味が獲得して生きていました。それに対して、現代の取り決めは「人間は力と引き換えに、意味を放棄することに同意する」ことです。つまり「なぜ生きているか?」という疑問は置いておいて、健康や幸福を求めていくことに価値を置いているのです。人間至上主義の人生における最高の目的は、多種多様な知的経験や情動的経験や身体的経験を通じて知識を目いっぱい深めることです。それを実行するために、科学を利用するのです。生命科学は、感情も知能も生化学的アルゴリズムに過ぎないとして、膨大なデータから個人がどう行動する健康と幸福が得られるかを教えてくれるようになります。

 そして、コンピューターの進歩と生命科学の知見から、人は神に近い存在の「ホモ・デウス」を目指すのです。ホモ・デウスは現在のホモ・サピエンスの進化系です。様々な遺伝子操作などのテクノロジーを利用して、健康で寿命がはるかに長く、より高い知能と優れた身体能力を持っています。ホモ・デウスが出現すると、現在の我々人類は劣等人類として衰退に向かうであろうと推測しています。

 このような動きは、すでに始まっています。グーグルベンチャーズのCEOビル・マリスは「500歳まで生きることは可能」と考え、不死のプロジェクトをスタートしています。また、中国では人の受精卵の遺伝子操作が行われました。

 ハラリ氏は人類の歴史を俯瞰して、「ホモ・デウス」の出現の可能性を示唆しています。一方で、予測を書くことでその予測に対する反応が起こり、予測通りにいかなくなることも多いに起こりうると述べています。

 ハラリ氏は動物(特に家畜)の悲惨な状況を憂い、肉や乳製品を一切食べない厳密な菜食主義者として知られています。そのためか、ホモ・サピエンスをある意味突き放してみることができ、極めて鋭い分析をしているように思います。個人的には現代で最高の知性の持ち主だと思っています。

ジャパンメディカル卓球大会     2019年4月8日

 昨日はジャパンメディカル卓球大会という医療関係者が参加する全国大会に参加しました。今回は日本医学会総会が名古屋で開催されることに伴い、愛知県大府市で行われました。予選などはなく、医療関係者が申し込みをすれば参加できる大会です。

 参加人数は約150人で、団体戦(5シングル)と年齢別の個人戦が行われました。

 団体戦の第1試合の相手は、40歳の左利きのペンホルダーのドライブマンでした。年齢ハンディ1点をもらい、お互いに2セットずつを取り合い最終セット。終盤まで競り合いましたが、最後はネットインで決められ9-11で負けてしまいました。

 団体戦の第2試合は裏面に粒高を貼った50歳のカットマンとの対戦でした。複雑な変化をする粒高ラバーを貼っている相手は苦手なのですが、相手のカットに対してカーブドライブが有効で、こちらの思い通りの試合で3-0で完勝しました。

 団体戦3試合目は、昨年個人戦でベスト4に入っている右利きのペンホルダーでした。年齢ハンディ1点をもらって、一進一退の攻防で最終セットに入りました。バックハンドサービスとドライブが有効で、6-3とリードして「これでいける」と思っていたところで団体戦で負けが決定して試合は中止となりました。私の中では「勝ちゲーム」としてカウントすることにしました。

 個人戦の1回戦は、大学の同級生との対決でしたが、彼の練習不足によるイージーミスがみられ3-1で勝ちました。2回戦は日本卓球協会ナショナルチームドクターもされていた70代後半の先生が相手でした。サーブ、ドライブとも好調で3-0で勝ちました。

 準々決勝は、ジャパンメディカル卓球連盟会長で試合運びのうまい60代後半の先生でした。1セット目はサーブ、レシーブで翻弄され、2-11で落としてしまいました。2セット目はサーブ、レシーブを工夫して11-5と取り返しましたが、3セット目は再び5-11で取られました。4セット目になっても相手のうまさにやられて、6-10とマッチポイントを握られました。しかしここから粘りを見せて4本連取して、ジュースに持ち込みましたが、ここで痛恨のサーブミス。そのまま失点し、負けてしまいました。

 もう一つ勝ってベスト4に入れば、賞状がもらえるところだったのでとても残念でした。最後に両足の裏の筋肉がつってしまいましたが、1日に6試合もできて心地よい疲労感もあり、充実した1日を過ごすことができました。

 20代から70代の男女が集まった会場は、真剣ながらも楽しい雰囲気でした。改めて「卓球は生涯スポーツだ」と強く感じました。

イチローの引退   2019年3月24日

イチロー選手が引退しました。イチローには特別の思い入れがあったので感慨がひとしおです。

 オリックス時代に彗星のように現れて、ヒットを量産するイチローはとても魅力的でした。オリックスの試合のテレビ中継は、イチローの打席が回りそうな時にチャンネルを合わせていたものです。

 大リーグに挑戦して1年目の2001年。非力なイチローが首位打者になって、MVPをとって活躍するのはとても痛快でした。翌年に私はサンフランシスコに留学しました。行った理由の何割かは、イチローの活躍を生で見ることでした。

 サンフランシスコの隣町のオークランドや、少し離れたサンディエゴにイチローが出場するマリナーズの試合を7、8試合見に行きました。イチローは期待通り見に行った試合すべてでヒットを打ってくれました。イチローの打席は球場も雰囲気が変わり、アメリカの観衆も息をのんで観戦していることが感じられました。イチローの走塁と守備にもとても躍動感があり、見ているだけでも幸せでした。

 また、求道者のような姿勢とその哲学的な言動も魅力的です。「夢をつかむイチロー262のメッセージ」(ぴあ 2005年)には、味わいのある言葉がいくつもありました。

「現役中に過去のことを懐かしんではいけません」

「準備に集中することができました。それがすべてだと思います。」

 過去を振り返らず前向きに、その日その日の準備をしっかりして目の前のことに全力を尽くすことの大切さを教えてもらっています。私の中では、イチローが現代の日本人の中で最も誇れる人だと思っています。 

 イチロー選手、本当にこれまでお疲れ様でした。

2月のブログ

ファクトフルネス  2019年2月17日

世界的なベストセラーになっている「FACTFULNESS(日経BP 2019)は、スウェーデンの医師でグローバルヘルスの教授であるハンス・ロスリング氏が書いた本です。世界の問題をデータに基づいて正確にわかりやすく伝える本で、私たちの世界の状況に対する認識不足を思い知らせてくれます。

 この本では、最初に経済、健康、人口や教育などに関する世界のデータについて3択の問題が出題されます。

 問 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A 20%  B 40%  C 60%

 問 世界中の1歳児の中で、何らかの病気に対して予防接種を受けている子どもはどのくらいいるでしょう?

A 20%  B 50%  C 80%

 上記のような13問のうち、私の正解数はわずか3問で、チンパンジー以下という結果になりました(チンパンジーがランダムに選んでも4問は正解します)。

 しかし、世界中の科学者や政治家も私と同じようなレベルで、チンパンジーのレベルを超えている人は稀だと述べられています。

 どうも人間は様々な思い込み(本能)があり、事実を事実として受け止めることができないことを著者は鋭く指摘しています。

 恐怖本能のため、私たちは恐ろしいものに自然と目がいってしまいます。例えば自然災害、飛行機事故、殺人やテロなどは、メディア報道や自身の関心フィルターのせいで、多くの人が過大評価しています。リスクは危険度×頻度で決まることを頭に置いておく必要があります。

 また、私たちの犯人捜し本能のために、うまくいっていないことがあると誰かが見せしめとばかりに責められることが起こります。最近日本で起こった例では、虐待で死亡した女児の問題が頭に浮かびました。このような場合に、特定の人を責めることよりも、その状況を生み出した、絡み合った複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐべきだと著者は述べています。また、うまくいっている時にも、個人の功績ではなく、社会を機能させている仕組みに目を向けるべきとも主張しています。

 著者は自身の失敗談もたくさん交えて、ユーモアたっぷりに世界の実情を伝えています。アフリカなどの現地での医療活動の実績も豊富で、インターネットでも見られるTED(世界的講演会を開催しているNGO)の動画でのウイットに富んだ講演も人気です(銃剣を飲み込むパフォーマンスも有名です)。残念ながら本書の執筆後に亡くなられていますが、飾らない人柄で、国際人(コスモポリタン)としては理想的な人だと感じました。

 著者の足元にも及びませんが、ほんのわずかでも人々の幸福に貢献できたらと思いました。

1月のブログ

マルチバース宇宙論  2019年1月14日

高校生の時に最も苦手だった科目は理科でした。なかでも物理は全く理解できませんでした。文系クラスに所属していたため、物理の先生が「文系で物理を選択して受験する奴はいないだろう。授業ではベトナム戦争の話をする」と言って、ほとんど物理の授業をしなかったのです。

 文学部に入学して、その後医学部を受験することになり、ほんの少しだけ物理を勉強して医学部に入学。教養部(大学12年生)では、もちろん物理の授業はチンプンカンプンでした。テストの回答用紙を見た物理の先生が、「これまで教師をやっていて、お前ほど物理がわかっていない生徒は初めてだ」と言われました。幸い、お情けで物理の単位をくださったやさしい先生がいたおかげで、何とか留年せずに教養部を終え、専門課程に進むことができたものでした。

 物理の理解度は平均的な理系高校生に及ばない私ですが、物理関係の本を読むことは大好きです。

 特に大好きなのは宇宙論。「宇宙がいつごろどのようにできて、どこまで広がっているのか?宇宙には、どのくらいの数の星があるのか?」などの疑問を次々に解明していく物理学者を深く尊敬しています。物理学は「科学の王様」と言われていると聞いたことがありますが、すべての科学の基礎になる学問であることは間違いありません。

 その中でも、宇宙が無数にあるという「マルチバース」の話は、読んでいてもワクワクします。インフレーション理論でノーベル賞候補ともいわれる東大名誉教授の佐藤勝彦氏の「宇宙は無数にあるのか」(集英社新書 2013)と、新進気鋭の野村泰紀氏(カリフォルニア大学バークレー校教授)の「マルチバース宇宙論」(星海社新書 2017)は、いずれもマルチバース理論を解説する本です。

 両教授とも「なぜ宇宙は無数にあると考えられるのか?」について、説明をされています。ダークマター、反物質、素粒子の構造、真空のエネルギー、宇宙の加速度的膨張、超弦理論、量子重力や余剰次元について、噛んで含めるように解説されていますが、さっぱりわかりません。ただ、「すごいことがわかっているんだな」と感心するばかりです。

 物理学者の間では、宇宙があまりにも人間に都合よくデザインされていることが大きな課題になっていました。この問題を現時点で最もうまく説明するのが、「マルチバース」という仮説のようです。マルチバースでは、異なる性質をもった宇宙が無数に(10500乗以上:1の後に0500以上続く数)あるので、その中のいくつかは高等生命体を生じる条件が満たされます。このように考えれば、神様を持ち出さなくても私たちのいる宇宙の物理的条件の説明がつきます。

 人類はまだ太陽系内の惑星のことも観測は不十分で、まだまだわかっていないことが多い状況です。一方で、数兆個以上の星があるこの宇宙が、さらに無数にあるということを証明しようとしている物理学者は、人類の知能を代表する素晴らしい存在です。宇宙の謎を解明して、なるべくわかりやすく説明してほしいと願っています。

子どもの脳を傷つける親たち  2019年1月6日

 「子どもの脳を傷つける親たち」は、昨年11月の「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演された、福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授の著書です(NHK出版新書 2017)。

 友田教授は私も直接お話したことがありますが、とても気さくで分かりやすいお話をされる先生です。

 この本では、子どもへの「マルトリートメント」が子どもの脳を傷つけることを、脳の画像研究の成果から示しています。

 マルトリートメント(malは「悪い」、treatmentは「扱い」の意味)とは「強者である大人から、弱者である子どもへの不適切なかかわり方」を示す言葉です。虐待という言葉は偏ったイメージが先行して、多くの人が「自分とは関係ない」と考えてしまうためマルトリートメントという言葉が推奨されています。

 画像研究からは以下のことがわかってきました。

叩かれるなどの体罰を受け続けた子どもは、脳の前頭前野が委縮します。前頭前野がダメージを受けると、危険や恐怖を常に感じやすくなります。性的マルトリートメントを受け続けた子どもは、一次視覚野が委縮し、ワーキングメモリが低下します。暴言を浴び続けた子どもは、側頭葉の聴覚野が肥大する変化が見られます。この変化は脳の発達期に正常な神経の刈り取りが上手くいかないために、人の話を聞き取るのに負荷がかかり、人との関わりに障害をきたすと推測されています。

 両親間のDVを目撃することも、とても大きいトラウマになります。驚くことに身体的な暴力よりも言葉の暴力に接した方が、脳へのダメージが大きいことがわかっています。子どもの前での夫婦喧嘩は、かなり子どもの脳に大きい傷を負わせるので注意が必要です。

マルトリートメントに陥らないようにするために、子どもとの関係を改善する心理教育的介入プログラムにCARE(Child-Adult Relationship Enhancement) があります。

この中で、親や身近な大人が子どもに対して「積極的に使いたい三つのコミュニケーション」として、①子どもが言った言葉を繰り返す②子どもがやっている適切な行動を言葉にする③具体的に好ましい行為や姿をほめる、が挙げられています。

一方で「避けたい三つのコミュニケーション」としては、以下のものが挙げられています。①子どもに命令や指示をすること②考えごとをしている子どもに「何について考えているの?」といった不必要な質問をすること③禁止や否定的な表現。

現在日本では、児童虐待相談対応件数は毎年増加し、13万件を超えています。特に自閉症スペクトラムやADHDの子どもたちは、その特性から親を含めた大人たちからマルトリートメントを受けやすい傾向があります。いい親子関係を築くことがとても重要な課題だと感じています。

ボケとツッコミ  2019年1月1日

以前から漫才が大好きで「ボケとツッコミ」の巧みさに魅了され、その秘密を知りたいと思っていました。また、毎週「アメトーク」と「ホンマでっか!?TV」を見て、さんまさんをはじめとする芸人の人たちの話術に惚れ惚れとしていました。

AMAZONで、「ボケとツッコミ」で検索してヒットした放送作家・漫才作家の村瀬健氏の「最強のコミュニケーション ツッコミ術」(祥伝社新書 2015)を読み、ツッコミのイメージが少しつかめた気がしました。

 現代のツッコミは次の10種類に分けられます。①指摘ツッコミ、②疑問ツッコミ、③擬音ツッコミ、④ノリツッコミ、⑤リアクションツッコミ、⑥すかしツッコミ、⑦セルフツッコミ、⑧倒置ツッコミ、⑨広げるツッコミ、⑩たとえツッコミ。

 いずれのツッコミも、私にはとてもハードルが高いものですが、④ノリツッコミと⑩たとえツッコミに憧れます。

 ノリツッコミの例で挙げられていたのは、「さんまのまんま」で女優さんとさんまさんの会話。

ゲスト「まぁ、でも、さんまさんはこの先、ずっと独身でしょうからね」

さんま「そうやねん、結婚はこりごりやし、このままいって最後は孤独死ってコラ!」

 さんまさんの話術は素晴らしく、本人は嫌がるでしょうが、個人的には人間国宝に指定するべきだと思っています。

 たとえツッコミでは、フットボールアワーの後藤さんの例が紹介されています。

一発ギャグがスベった芸人に→「お前、ようそんなギャグだせたな!陶芸家なら割ってるヤツやで!」

 とてもキレのあるツッコミで、フットボールアワーの後藤さんならではの神業です。

 関西人の妻に聞くと、まず⑤リアクションツッコミを練習するようにと言われました。吉本新喜劇で、誰かがギャグをするとずっこけるあれです。トライしてみましたが「タイミングが遅い」「アクションが小さすぎる」と丁寧な指導を受けていますΣ( ̄□ ̄|||) 関西人には簡単にできることが、山口県出身の私には難しいようです。  

 村瀬氏によると、「ボケは才能に左右されるが、ツッコミは才能ではなく、努力と経験で上達できる」とのこと。しっかり練習して、小さいボケも拾える、いいツッコミができる人間になりたいです♡

 今年は、おせち料理講座で作ったおせちです。

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